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​鋳金技法について

​鋳金(ちゅうきん)とは金属を溶解し、型に流し込むことでものを生み出す金属工芸の総称です。
その中でも古来から受け継がれている真土型(まねがた)という技法は土と水、少量の藁で型を作り、火と風の力で型を焼き、金属を溶かします。
そのため、自然の力がなくては成立しない技法であると同時に、
現代においては金型による大量生産(いわゆるキャスト)を目的として工業的に利用されてもいる、非常にアンバランスな分野であると言えます。

工芸という領域の中でアート作品を作る際、必ずといって良いほど「手」がクローズアップされます。
土を手で練り上げ形を成形したり。
糸と糸をより合わせて一枚の布を織ったり。
金属の板を金づちをふるって叩いてのばし、目指す造形に近づけたり。
​これら手によるものの造形とは、ゼロから目標とする像まで、「手の技」によって近付けていく作業であるといえます。
「Hands on Art」という海外での呼称が良い例かもしれません。


しかしその中でも鋳金技法は異様な存在であると言えます。
原型の段階で目標とする像まで作り上げても
型を焼いてゼロに戻し、
金属を流し込んでバリを含めた目標とする形以上の物体を生み出し、
削って整え、本来作りたかった像に近づける。

鋳金における造形は、無と有を素材を変えながら往来してゆきます。
作品が形作られる瞬間は型のなかの「空洞」となり、
​金属も人の手を離れ、型という枠組みのなかで素材が動き回ることによって造形が達成されます。
この瞬間は作り手であっても目にすることのできない、不可侵の領域なのです。

ただ自然現象に身をまかせるのではなく、己の手で作り上げたフレームの中で金属の力を信じる。
1200度を超える危険な溶解作業のなかで、己の手の技を信じ、自然の力を信じる。
​私はこの瞬間に工芸の新しい表現への可能性があるのではないかと信じています。

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